2009
07.31

STORY 22 : end of summer

9月某日、空は澄み切った青空、風はひんやりとして心地よい。
ずっと素足で通した足に靴下を履く、これがいつもの夏が終わったサインだ。夏の終わりは幾つになっても切ない想いが込み上げる。他の季節を振り返ることはないのに何年も遡って夏の出来事を想い出してしまうのはそれだけの理由が夏にはあるのだろう。
行く夏を思い浮かべ聞く音楽はまた格別、その時間は他には変えられない。

First Light / MATSUSHITA MAKOTO (1981)
夏が通り過ぎる瞬間を感じさせてくれるアルバム、極上のジャパニーズAOR。セッションギタリストである松下誠だが、その歌声は上手い訳ではないがそこが良い。カバー写真も自分としては大変お気に入り、何の変哲も無いLAの街角だがこの時代を過ごした者にはまさしくロスアンジェルスのイメージ。再発した時に何故かイラストに変わってしまったのが本当に残念。写真の場所はハリウッド通りとラブレア通りが交わる所、現在とは景色が違うが少ない情報と記憶を使い Google Earthで探しだした。きっと本人も何処の写真か知らない事だろう。

日本の夏が大好きだ。じっとりと湿り気があり動くのも億劫になるが、そのウエットな感覚は他の何処にもない。その湿り気が夏の到来を知らせその夏に期待を膨らませる、暑さは人の心を高揚させ平常心を損なわせる、ドライな気候だったらそんな事もないだろう。汗まみれの肌に焼き付く太陽、夜になっても下がらない気温、その情熱の空間に嫌でも入り込まさせられる。そして人々はその開放感に惑わされ本心をさらけ出す、正に鬱陶しく面倒な季節だ。

Circus1 / CIRCUS (1978)
大ヒット曲になったミスターサマータイムを含むサーカスのデビュー盤。そのミスターサマータイムの原曲はフレンチ・ポップス。アルバム中の殆どの曲が洋楽のカバーソングで構成されているが不思議と全くそれを感じさせない。他の楽曲も昭和の歌謡曲界を彩った作詞家なかにし礼の日本語訳が素晴らしく、知らず知らずうちに熱かった70年代の夏に引きずり込まれる。その後のアルバムは方向性が変わったようなのでどうなのだろうか。

夏の午後、ビーサンを履きひさしの下で頬張るかき氷と焼きトウモロコシ。陽がかげり路地裏を歩けば何処からか風に乗って風鈴の音が聞こえてくる。夜になれば縁側でスイカにかぶりつき蚊取り線香の臭いに進行中の夏を感じる。
幾つになってもその季節の気分は少年のままで夏休みの絵日記を心に描いている。その宿題はいつも未完成に終わるが毎年引き継がれ、絵巻物のようにずっと身体にまとわりついて離れない。

No Smoking / HARA KUMIKO (1978)
原久美子のファーストアルバム。生まれつきの視覚障害をもった彼女だがバックにブレッカーブラザース、高中正義、坂本龍一などを従えて歌声はとてもソウルフル。70年代後半は沢山の個性的な歌姫達が飛び出して、様々な世界を魅させてくれた。彼女の背景に写る建物は横浜赤レンガ倉庫、今とは違い怪しげな暗さを持つ。自分自身も好んで何度も撮影場所に選んだところだ。当時はまだ保税倉庫として現役で外国製機材は事前登録が必要、撮影時間も限られ苦労した。修復後はその魅力を失った。

夏の終わりは誰も教えてくれない、途轍もなく長い人もいるだろう短い夏で終わった人もいるだろう。
夏の長さは人それぞれで気持ちの持ち方次第、しかし窓を閉め切った空調の効いた部屋に居ては決して判らない。エンドレスサマーなんて言って夏を追いかけることも出来るかも知れないが、それでも必ず終わりは来る。悪あがきはいけない、終わりがあるから季節は輝く。
ちょっとだけ夏を長くしたかったら早めに靴下を脱いでしまおう。

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